溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
大人になって彼女の本音に触れ、チクリと胸が痛む。

それなのに私は彩音に心を開こうとしなかった。どこかで一線を引いていたから。

だからこそもう逃げたりせず、ちゃんと彩音と向き合いたい。

カップをテーブルの上に置き、彩音を見据えた。

「彩音。……あのね、聞かされたら気分悪くなる話かもしれないんだけど、私の話を聞いてくれるかな」

私にとって亡くなったお母さんが、かけがえのない存在のように、彩音にとってもお義母さんはそうなはず。

だからこそ嫌な気持ちになるかもしれない。それでも彩音には聞いてほしい。

すると彩音は笑顔で頷いた。

「もちろんだよ。お姉ちゃんの話、ちゃんと聞きたい」

「彩音……」

そんな彼女に私は亡くなったお母さんのこと、二年後すぐに再婚したお父さんに感じた想い、すべてを打ち明けた。

「お父さんの転勤が決まってホッとしたの。できるならしばらく会いたくないと思った。だからお正月もお盆も帰らなかったの」

彩音は最後まで口を挟むことなく話を聞いてくれた。

だから彼女が話を聞いてどう思ったかわからず、身体中に緊張がはしる。
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