溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
すぐに周囲を見回すと、人だかりの隙間から男性が倒れているのが見えた。

「悪い、佐野。ちょっと待ってて」

「う、うん」

すぐに医者の顔になった彼は一目散に駆けつける。私も心配で後を追った。

「すみません、通してください医者です。どうされましたか?」

人をかき分けて男性の元へ向かうと、一緒にいた女性が泣きながら説明した。

「主人が突然倒れて……! お願いします、助けてください!」

懇願する女性に頷き、佐々木君は男性の容態を確認する。

「まずいな、心停止している」

すぐさま心臓マッサージを始めた佐々木君は、周囲を見回した。

「近くにAEDを設置しているお店があるはずです。誰か急いで持って来てください! それと救急車も呼んでください」

佐々木君の声に周囲にいた数人が「持ってきます」と言い走り出す。

その後、ひとりが持ってきたAEDで素早く蘇生を行ない、男性は無事に息を吹き返した。

ちょうど救急車も到着し、佐々木君は駆けつけた救急隊員に、どこかに電話をかけながら状況を説明していく。

突然の出来事に私はただ、茫然と見守ることしかできなかった。
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