溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
不安になることないよな。今だけを信じていればいい。

食べ終えた後、PHSが鳴り呼び出され、急いで病棟へと戻った。



「箱根……伊香保もいいな」

数日後、お風呂から上がってから自分の部屋のソファに腰掛け、買い込んだ雑誌のページを捲りながら、どこに行こうかと思案する。

休暇が取れるとしても二日。そうなると行き先はどうしても近場になる。

できるなら普段なかなか会えない分、ゆっくりふたりで過ごしたい。だから温泉地に行くことで決まったものの、肝心の行き先がまだ決まらない。

関東近郊にも温泉地はたくさんある。どこも魅力的で決められないって環奈が嘆いていたけれど、本当になかなか決められそうにないな。

環奈と温泉地を観光する姿を想像しながら、夢中でページを捲っていると、いつの間に入ってきたのか背後から父さんの声が聞こえてきた。

「なんだ真太郎、旅行でも行くのか?」

「わっ!?」

気配なく現れた父さんに、情けなくも悲鳴にも似た声を上げてしまう。

「なんだよ、勝手に入ってくるなよな」

うるさい心臓を鎮めながら文句を言うものの、父さんは俺の隣に腰掛けた。

「言っておくが、ノックはしたからな。気づかなかったお前が悪いんだろう」

シレッと言うと父さんは、テーブルの上にあったガイドブックのひとつを手に取った。
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