溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「温泉、いいな。そういえば最近行っていないな」

「……言っておくけど、父さんたちと行くつもりで計画を立てているわけじゃないから、期待はしないでね」

この歳になっても父さんたちは、家族の時間を強要してくる。年に数回必ず家族旅行に連れて行かれる。それは結婚している姉さんもだ。よく義兄さんも付き合ってくれていると思う。

家族の仲が良いねってよく言われるけれど、年頃には酷だった。

昔の苦い思い出を思い出していると、すごい剣幕で父さんが詰め寄ってきた。

「真太郎、お前まさかっ……! 環奈ちゃんとふたりで旅行に行くつもりじゃないだろうな!?」

「……だったらなに? まさか男友達とこの歳になって旅行に行くとでも思っているのか?」

ガイドブックを読みながら淡々と答えると、父さんは勢いよく立ち上がった。

「そんなのダメだダメだ! 嫁入り前のお嬢さんとふたりっきりの旅行なんて、認めないぞ!」

荒々しい声を上げて言う父さんがある人と重なって見えて、深いため息が漏れる。
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