社内恋愛狂想曲
「“相談に乗って欲しい”とか適当なこと言ってますけど、僕をなんとか誘惑して口止めすることと、橋口さんの独占欲を煽ることが目的なんじゃないかと」

奥田さんの本性を知っている瀧内くんを手懐ける作戦に出るとは、どこまでも女の武器をフル活用する女だ。

私にも奥田さんの1割程度でもそのスキルがあれば、護に浮気されたりはしなかったのかも知れない。

「護も奥田さんも嘘ばっかりで、信じられる要素がひとつもないわ。社内恋愛ってめんどくさいけど、周りに内緒にしとくとろくなことないね」

「言ったら言ったで、いろいろ邪魔くさいですけどね」

なんだかやけに実感がこもっているように聞こえる。

瀧内くんにもそんな経験があったりするんだろうか?

「私もそう思って内緒にしてた結果がこれ。先の見えない恋愛はもういいわ。そろそろ本気で落ち着きたいから、真面目に結婚を考えられる人と付き合いたい」

私がそう言うと、瀧内くんはすっかり冷めてしまったコーヒーを飲もうとカップを持ち上げたその手を止めた。

「伊藤先輩とですか?」

「さっきも言ったけど、伊藤くんとの結婚はないな。愛情がない上に、なんの期待もされない結婚なんて寂しいじゃない?元カノに未練ありそうだったし、もしその人とうまくいったら、彼女と結婚するから離婚してくれ、なんてあっさり言いそう」


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