社内恋愛狂想曲
かけて引いたり、足して割ったり
明くる日、商品管理部のテーブルには生八ツ橋が二箱と抹茶バウムクーヘン、抹茶の生チョコレートに茶団子など、京都土産がずらりと並んでいた。

生八ツ橋を持ってきたのはもちろん私で、それ以外は奥田さんが持ってきたのだ。

私が持ってきた生八ツ橋は由緒正しき老舗の銘菓で、味もデザインも、いかにも京都という感じがする。

生八ツ橋は美味しいから好きだけれど、日持ちがしない上にたくさん入っているから、とても一人では二箱も食べきれない。

それに引き替え、奥田さんが持ってきたお土産はどれも若い子が喜びそうな和風の洋菓子や、パッケージの可愛らしいものばかりだ。

「仕事で京都に行っていた彼がお土産に買ってきてくれたんだけど、一人でこんなにたくさん食べられないし、ダイエット中だから一緒に食べてもらおうと思って」などと言って可愛い子ぶっていたけど、種類は多くてもたいした量は入っていない。

つい二日ほど前にはフルーツとクリームたっぷりのフルーツタルトをペロリと平らげていたくせに、ダイエット中が聞いて呆れる。

すなわちこれは、きっと私への挑戦状みたいなものなのだと思う。

奥田さんは護のことをどこまで話しているのかは知らないけれど、友達や同僚に話すときは“彼氏”ということにしているらしい。

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