社内恋愛狂想曲
護にもらったお土産を「彼氏からもらった」と言って、護の彼女である私のいる職場に持って来るあたりが、本当にふてぶてしいし、厚かましい。

護とはもう別れようと思っているとは言え、自分の彼氏を他人が彼氏呼ばわりしているのは、やはりいい気はしないものだ。

奥田さんは私が生八ツ橋を二箱も持ってきたのを見て、「京都に行ってきたんですか」と聞いた。

「京都に行っていた知り合い二人から偶然同じものをもらった」と答えると、「そんなことがあるんですね」とニヤニヤしていた。

護が私のところへ来る前に奥田さんのところに行って、女子受けしそうなお土産を山ほど渡し、「彼女には取引先からもらった生八ツ橋を渡しておく」とでも言ったかどうかは定かではないけれど、奥田さんが勝ち誇った顔をしていたのは言うまでもない。


昼休みが終わる15分ほど前、パウダールームの一番奥の席で化粧直しをしていると、スマホの画面にトークアプリの通知が映し出された。

メッセージの送り主は瀧内くんだ。

【お疲れ様です。昨日のことについて話がしたいので、仕事が終わったら食事でもしませんか】

昨日のことというのは、おそらく三島課長の偽婚約者の件だろう。

護とのことも話したいので、仕事の後に瀧内くんと会う約束をしてメッセージのやり取りを終えた。

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