社内恋愛狂想曲
奥田さんは料理本の表紙をじっと見て、何か考えているようだ。

「私、ガッツリ系の料理はあまり得意じゃなくて……例えば佐野主任の彼氏さんはどんな料理がお好きですか?」

その言いぐさは、ガッツリ系以外の料理は得意という意味に聞こえる。

おまけにさりげなく私に探りを入れて、護の好きな料理をリサーチしようとしているな?

私から聞き出した護の好きな料理をこっそり練習して、うまく作れたら護に振る舞う気でいるんだろうか。

だったら少し意地悪してやろうかなとか、逆に親切に教えてあげてもいいかもなどと考える。

どちらにしても奥田さんは料理がまったくできないという話だから、いきなり私よりうまくは作れないはずだし、いっそのこと親切に教えて意地悪してやろう。

「私の彼はとにかく肉料理が好きなの。だから豚の生姜焼きとか、鶏の唐揚げとかトンカツとかハンバーグとか、料理本も必要ないくらい簡単な料理で喜ぶんだけど……。そうそう、例えていうなら、母親がよく作るような簡単な家庭料理ね。特に好きなのはレバニラ炒めとピーマンの肉詰めかな」

料理の苦手な奥田さんにはどれも難しいだろうけど、あえて簡単な料理だと誇張してみた。

私が護に求められているものは料理しかないんだから、それくらいは奥田さんより優位に立ちたい。
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