社内恋愛狂想曲
奥田さんと別れ再び文房具コーナーに向かう途中で、趣味のコーナーの製作キットに興味が湧いた。

おしゃれで可愛らしいリングピローが手軽に作れて、友人から新郎新婦へのプレゼントや、結婚式を控えた新婦に大人気らしい。

手芸は嫌いではないし、あまり複雑なものでもなさそうだから、休みの日にでも作って珠理にプレゼントするのもいいなと思って手に取る。

雑誌コーナーはすぐ近くだし、もし奥田さんが見ていたら、私が護との結婚準備を着々と進めていると勘違いして、また少し焦るかも。

それはそれで面白いなと思いながら、種類がいくつかある中から珠理の好みに合いそうなものを選んだ。

「へぇ……佐野って料理だけじゃなくて、こんな趣味もあるんだ」

背後から耳のすぐそばで声がしたので驚いて振り返ると、伊藤くんが私の手元をのぞきこんでいた。

「伊藤くん……びっくりさせないでよ」

「あー、悪い。通りすがりに佐野の姿が見えたから。ところでそれ、佐野にはかわいすぎないか?」

「私にはね。でもかわいいでしょ?」

キットの写真には、白いサテン地のクッション部分を囲んで、青いリボンが結ばれたリングピローに、白いタキシード姿とウエディングドレス姿の小さなテディベアがあしらわれている。

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