社内恋愛狂想曲
伊藤くんと葉月はお互いの顔をチラッと見て、目が合うと慌てて目をそらした。

まるで付き合いたての中学生カップルだ。

「伊藤くん、さっきの勢いはどこに行ったの?目の前に本人がいるんだから、逃げられないうちにちゃんと言えば?葉月が好きだって」

ちょっと意地悪をして冷やかし半分で言ってやると、伊藤くんは「勘弁してくれよ」と呟いて、恥ずかしそうに目元を右手で覆った。

「木村先輩もホントは今でも伊藤先輩のことが好きなんでしょ?いつも周りに気付かれないように伊藤先輩のことを見てますもんね」

「なんでそんなこと知ってるねん?!」

葉月は思わずそう言ってから、自分が伊藤くんを見ていたと認めたことに気付き、慌てて両手で口を押さえた。

しかし時すでに遅し、覆水盆に返らずだ。

「続きはお二人だけでゆっくりどうぞ。それより早く注文しませんか?」

瀧内くんはこんなときまで、どこまでもマイペースだ。

私としてはもう少し二人にお節介を焼きたいところだけど、それは野暮ってものだろうか。

伊藤くんはテーブルの端に立ててあるメニューを取って広げ、照れくさそうに葉月に差し出した。

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