社内恋愛狂想曲
吐くものを吐いてある程度落ち着いた葉月が、トイレから少し顔を出して誰が来たのかと尋ねると、茂森さんは新聞の勧誘だと答えた。

ずっと前から断っていたのにしつこく勧誘してくるあの新聞屋だと思った葉月は、“要らんから帰ってもらって”と答えた。

状況のわからなかった伊藤くんは、葉月と茂森さんが直前までベッドで抱き合っていたのだと勘違いして、長い間連絡が取れなかったことで完全に葉月に嫌われてしまったのだと思い込み、絶望のあまり現場に踏み込んで葉月を直接問い詰めるとか、状況を確かめるということはしなかった……いや、できなかった。

…………と、いうわけだ。

「あんまり熱と吐き気がひどいから、救急外来に連れて行ってもらったら、ウイルス性の胃腸炎やった」

「胃腸炎……?あいつ、まぎらわしい言い方しやがって……」

ずっと気になっていた出来事の真相を聞いた伊藤くんは、悔しそうに奥歯を噛み締めた。

ショックなのはわかるけど、真相を確かめもせず勘違いしたまま身を引いた伊藤くんもどうかと思う。

葉月が説明を終えたとき、ちょうど注文していた料理が運ばれてきて、瀧内くんの目の前にハンバーグとエビフライの乗った鉄板が置かれた。

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