社内恋愛狂想曲
「できれば……なんですか?」

「いや……できれば親に急かされてしかたなく、結婚相手にちょうどいい人を選ぶんじゃなくて、ちゃんと自分が幸せにしたいと思える好きな人と一緒になりたいなって……そう思っただけだよ」

照れくさそうにそう言った三島課長の横顔は、どことなく寂しそうにも見えた。

理想はそうでも、やっぱり現実はいろいろ厳しいということだろうか。

普通ならここは嘘でも「あなたなら大丈夫」とか、「絶対できる」とか言って励ますべきなんだろうけど、私にはそんないい加減なことは軽々しく言えない。

「そうですね……。私もそういう結婚がしたいです」

それが今の私に言える、嘘も虚飾もない精一杯の言葉だった。

気の利いた言葉ではないけれど、本心から出た言葉だからいやな気持ちにはならず、むしろ自分自身もそれを望んでいるんだと気付けたことで、清々しささえ覚える。

「そうか……。ホント言うと、俺はこの先一生結婚はしないかもって半分あきらめてたんだけど……もう一度頑張ってみようかな」

「はい、あきらめるなんてもったいないですから、ぜひそうしてください!全力で応援します!」

三島課長が自分の幸せのために前向きになれたことが嬉しくて思わずそう言うと、三島課長は今度はおかしそうに声を上げて笑いだした。

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