社内恋愛狂想曲
「私、何かおかしなこと言いました……?」

「いや、言ってないけど、なんかおかしくて」

「私にできることならなんでも協力しますから、遠慮なくおっしゃってくださいね!あっ、そうだ!例の偽婚約者の件とか……」

三島課長に頼ることはあっても頼られることはないし、これまでずっとお世話になっているから、少しでも役に立ちたい一心でそう言うと、三島課長は首を横に振った。
 
「佐野の気持ちは嬉しいけど……後のこと考えると、俺はできれば嘘はつきたくないんだ。もし佐野が結婚することになったとき、実は嘘でしたって言いたくないし、佐野にも言わせたくない」

付け焼き刃の偽婚約者ではすぐにボロが出ることくらい、冷静に考えれば誰だってわかる。

タイトルは忘れたけれど、嘘をつくとそれをごまかすために嘘を重ねるようになり、その嘘はどんどん膨れ上がってそのうち取り返しのつかない大きな嘘になり、引き返せなくなったところで嘘がバレてすべてを失ってしまうというお話を、子どもの頃に読んだことがある。

三島課長は自分に対しても周りに対してもそうなりたくないから、本当に好きな人以外の人とのお見合いや結婚話を断り続けて来たんじゃないか。

勝手にお節介を焼こうとしてありがた迷惑なことを言った上に、三島課長を気遣ったつもりが逆に気遣われているような気がする。

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