社内恋愛狂想曲
今になって考えると、護は私とそんな恋人らしい時間を過ごすことが面倒だったんだろうなと思う。

護との思い出を振り返っても、良かったと思えるのは付き合い始めた頃だけだ。

……過ぎたことをあれこれ考えてもしょうがない。

なんにせよ今日は1日三島課長と二人で過ごすんだし、映画もディナーもせっかく瀧内くんが厚意で譲ってくれたんだから、楽しまないと申し訳ない。

「……決めました。私、今日はデートをとことん楽しみます」

私が拳を握りしめてそう言うと、三島課長は少し驚いた顔をした後、おかしそうに笑いだした。

「ああ……うん、そうだな。俺もそうする。じゃあ……行こうか、志織」

三島課長はそう言って手を差し出した。

ほんの少し戸惑ったけれど、その手をそっと握る。

「はい。行きましょう、潤さん」

三島課長は大きな手で私の手を優しく握り返した。

こんな風に三島課長と手を繋ぐなんて初めてだから、思った以上にドキドキする。

駅に向かって歩いていると、三島課長が少し赤い顔をして笑った。

「なんか……照れくさいな」

「……ですね」

照れくさいのとドキドキが入り交じって不思議な気分だけど、三島課長のあたたかい手はとても心地良かった。



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