社内恋愛狂想曲
『俺はずっと気にして志織のことばっかり考えてたんだけど……全然気にしてもらえないようじゃ、婚約者としてまだまだだなぁと思っただけ』

「えっ……」

何それ、どういう意味?!

婚約者としてって……偽物なのに?

これはあれか。

敵を欺くにはまず味方から的な?

味方というより、私は共犯者なんだけど。

返す言葉が見つからずに黙り込むと、三島課長は少し慌てた様子で、『じゃあまた明日、会えるの楽しみにしてる。おやすみ』と言って電話を切ってしまった。

電話が切れたあと、私は意味もなく握りしめたスマホをじっと見つめた。

また甘い言葉を不意討ちで食らって、三島課長の甘くて優しい声が耳に残り、なんだかやけに鼓動が激しい。

だから“志織のことばっかり考えてた”とか、どうしてそういうことを言うかな?

私はそういう甘い言葉には慣れていないから、三島課長が何か言うたびに無駄に心拍数が上がって、本当に心臓に悪いんだってば!

こっちは演技なんだからと割りきって気にしないようにしてるのに、改めてそんなことを言われたら意識してしまうじゃないか。

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