社内恋愛狂想曲
そこに深い意味はないとわかっているのに、私はその優しさにどんどん溺れそうになって、三島課長が本物の恋人ならきっと幸せだろうなとか、本当にそうなればいいのになどと思ってしまう。

そんな気持ちが湧き起こるたびに、三島課長には好きな人がいるんだから、そんなこと考えちゃいけないと自分を戒めた。

どうせいつかは偽婚約者はお役御免になって、こんなこともなかったことにするんだから、あんまり勘違いさせるようなことばかりしないで欲しい。

男の人は目的のためなら、好きでもない相手に優しい男のふりをすることができるって、私は知っている。

もう無駄に傷付いて泣きたくない。

それなのに嘘でも優しくされたら嬉しいってどうなの?

私の頭の中は矛盾だらけだ。

なんだかもう自分の考えに頭が追い付かず、わけがわからなくなって、だんだん口数が減り、うまく笑えなくなってしまった。

三島課長はそんな私の様子を見て、また心配そうに私の顔を覗き込むように見た。

「やっぱりかなり疲れてるみたいだし、食事が済んだら早いとこ帰ろうか」

せっかく誘ってもらったのに、早く帰りたいなんて思うわけがない。

むしろもっと一緒にいたいくらいなのに。

……なんて、口が裂けても言えない。

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