社内恋愛狂想曲
だから私は抑えきれなくなりそうな気持ちにしっかり蓋をして、静かにうなずいた。

「すみません……そうします」


食事を終えて早々に店を出ると、三島課長は私の手を引いて歩きだした。

誰も見ていないんだから、恋人らしく振る舞う必要なんてない。

それでも繋がれた手が優しくあたたかく私を包むから、このまま離さないでいてくれたらなんて思ってしまう。

だけど会社の人に見られたりしたら社内であっという間に噂が広まってしまうかも知れない。

「ここ、会社の近くですよ。誰かに見られたら……」

「ん?大丈夫だよ、俺はそんなの気にしないから。それより今は、手を離したら志織が倒れちゃうんじゃないかってことの方が心配」

「倒れませんよ……」

「そうか?でもまぁ……もし本当に倒れたりしたら、この間みたいに抱えて走るけどな」

この人はどこまで甘い言葉で私を翻弄すれば気が済むんだろう?

私を鳴かせたって後々煩わしいだけなのに、ここまでされて鳴くなって言う方が無理な話だ。

好きになってもどうしようもない人なのに。


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