社内恋愛狂想曲
「好きになった人に好きな人がいるんだけど……どうしたらいいと思う?」

照れくささも手伝ってゴニョゴニョと歯切れの悪い口調で尋ねると、葉月は斜め上の方に視線を巡らせて「うーん」と唸った。

「それがわかってても志織はその人のことが好きなんやろ?」

「うん……」

「ほんならそれでええんちゃう?好きになるのは自由やで?そりゃまあ、不倫とか略奪はオススメせんけど……相手の人が、好きな人より志織のことを好きになる可能性はあるやろ?好かれる努力すんのも告白すんのも、自由やと思うけどな」

至極まっとうな葉月の答えに潔さを感じて、私はその言葉を噛みしめながらうなずいた。

「その人の幸せの邪魔だけはしたくないんだけど……好きでいるくらいは許されるかな?」

あまりにも弱気な私の発言に苛立ったのか、葉月は私の肩を強い力でガシッとつかんだ。

「ええか、よう聞け志織。言わんかったら伝わらんこともあるねん。もしその人が好きな人に片想いしてるだけなんやったら、志織と立場は一緒や。そうやろ?」

「う……うん……」

伊藤くんからの変わらぬ愛を、何年も待ち続けていた葉月の発言とは思えないほどの強気の言葉に、私は少々怯んでしまう。

これは葉月自身の苦い経験が色濃く反映されたものなんだろうか?
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