社内恋愛狂想曲
「ちょっと今日は食欲がなくて……パスタなら食べられるかなと思って」

「明太子のカルボナーラはうまくできた?」

昨日の帰り際、口から出任せに明太子のカルボナーラに挑戦するなんて言ったけど、生クリームもベーコンもパスタも切らしていたから、そんなこじゃれたものは作っていない。

そもそも、私は普段から生クリームなんて買い置きしないし、よほど作りたいものがあるときくらいしか買わない。

実際はごはんに明太子を乗せて食べただけだ。

だけど私は、精一杯の見栄を張って笑って答える。

「ええ、美味しかったですよ」

「そうか……。俺も食べたかったな」

もしかして三島課長は明太子のカルボナーラが食べたかったから、私が夕食に誘うことを期待していたのか。

やっぱり私に期待されるのは料理くらいしかないんだと、少々卑屈な気持ちになる。

「駅前のイタリアンレストランにもありますよ。私が作るよりずっと美味しいと思います」

「ふーん……。でも俺は……」

三島課長が何かを言いかけたとき、辺りをキョロキョロ見回しながら食堂の通路を歩いてきたあの人……下坂課長補佐が、三島課長を見つけて手を振った。

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