社内恋愛狂想曲
「それってもしかしてラッキープリンってやつ?」

「ええ、そう呼ばれてますね」

「私、昔からものすごくプリンが大好きでね、午前中に営業部の女の子からそのプリンのことを聞いてずっと気になってたから、あったら絶対に買おうと思ってたのに売り切れで買えなかったの。私が前に本社にいたときにはなかったんだけど、そんなに美味しいの?」

下坂課長補佐はよほどプリンが好きらしい。

大きな目を子どものようにキラキラさせて見つめられ、“それ私に譲って”と懇願されているような気がした。

「すごく美味しいですよ。三島課長、下坂課長補佐に譲って差しあげたらどうですか?」

「……佐野が要らないなら」

「私はもうお腹いっぱいで食べられそうにないので結構です」

もうプリンどころの話じゃない。

あの二人が立ち去ってくれないなら、私の方からこの場を離れよう。

「私、部署に戻ってやることがありますので失礼します」

パスタセットはまだ半分ほど残っていたけれど、トレイを持って席を立ち、三島課長の顔は見ずに足早に食器返却口へ向かった。

三島課長は何も悪くないのに、愛想もかわいげもない失礼な態度しか取れない自分に嫌気がさした。


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