社内恋愛狂想曲
三島課長は特にいやがる様子も拒絶反応を起こすでもなく平然と会話している。

……やっぱりやめておこう。

三島課長はきっと私のことなんて気にしていないだろうし、そんな些細なことを蒸し返したって何も変わらない。

私が声を掛けるのをやめて営業部の前を通りすぎようとしたとき、タイミング悪く三島課長が顔を上げてこちらを見た。

「し……佐野!」

三島課長は私を“志織”と呼び掛けたのか、慌てて呼び直した。

見つかってしまったものはしかたがない。

無視するのは大人げないし失礼なので一応足を止めると、三島課長は急いで私の方に近付いてきた。

「お疲れ様です」

「お疲れ……これから帰るのか?」

「はい、総務部に寄ってから帰ります」

私はわざわざ会いに来たわけじゃないと言い訳をするように、手に持っていた書類の入った封筒を大袈裟に三島課長に見せる。

「そうか……。あのさ……」

「お昼はすみませんでした。ちょっと仕事のことで頭がいっぱいで、食欲も余裕もなくて……」

何を言われるのか内心ビクビクしていた私は、三島課長が何かを言おうとするのを遮って一方的に話し始めた。

三島課長は言いかけていた言葉を飲み込む。

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