社内恋愛狂想曲
三島課長はポケットから取り出したハンカチで私の目元を軽く押さえ、溢れだした涙を拭いてくれた。

こんなときに優しくされると余計に涙が止まらなくなりそうで、私は必死で笑って見せる。

「だからもう婚約者のふりは……」

“できない”と言おうとすると、三島課長は私の頭をポンポンと優しく叩いた。

「俺はそんなつもりで言ったんじゃないんだけどな……。つまらないことに巻き込んで、悩ませてごめんな」

「私こそ……たいしたお役に立てなくてすみません」

「いや……少しの間だけど、志織が婚約者になってくれて嬉しかったよ、俺は。ありがとな」

これは片想いのつらさを知っている三島課長から、どうにもならない片想いをしている私に対しての、最大限の優しさなんだと思う。

婚約者のふりはもう終わりだけど、これからも今まで通り同僚として、そして同じサークルのメンバーとして変わらず接してもらえるだろうか。

恋人同士の別れのシーンのような雰囲気になってしまい不安がよぎった。

「三島課長……まさかこれを最後に、私とは縁を切るとか……」

「言うわけないだろ。サークルのみんなにもいずれ俺からちゃんと事情を話すから、やめないで続けてくれるか?」

「三島課長が大丈夫なら……」

「大丈夫だよ。じゃあ……最後に駅まで送る」

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