社内恋愛狂想曲
「やっぱ気持ちだけありがたく。佐野主任、ここんとこお疲れみたいだから、これ食べて元気出しな」

予想外の労いの言葉に意表を突かれて手に妙な力が入り、箸でつまんでいたミニトマトがツルリと抜け出して、有田課長のおかずのお皿に着地した。

「あっ……すみません」

「ははは。いいよ、代わりにこれもらっとく」

有田課長は笑いながらミニトマトを口に入れた。

何年も一緒に仕事をしているせいか、有田課長は6つも歳上の直属の上司なのに、ずいぶん気さくな人だと思う。

「明日の歓迎会だけど、予約してる店から連絡があって」

「はい、なんでしょう」

「うちの営業部の二課とかぶってるらしい」

「えっ、二課とですか?!」

まさかのバッティングに気が遠くなり、危うくスプーンを落としかけた。

「人数が多いから貸し切りにして対応するんだってさ。二課がテーブル席を使って、うちが座敷を使うらしい」

その店は座敷とテーブル席を簡素なついたてで仕切られているだけなので、いやでもお互いの様子が見えてしまう。

また見たくない場面に遭遇してしまうのではないかと思うと気が重い。

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