社内恋愛狂想曲
私が小声でそう言うと、三島課長は私の手を握り返し、小さくうなずいてゆっくりと呼吸した。

三島課長は青白い顔をして脂汗を浮かべている。

私は新しいおしぼりをおしぼりトレイからひとつ手に取り、三島課長に手渡した。

「これで汗拭いてください。スッキリして少しはラクになるかも知れませんから」

「ありがとう……」

三島課長は弱々しい声でそう言って、おしぼりで顔や首筋にまとわりついた汗を拭い、大きく息を吐いた。

早く決着をつけないと三島課長の体が心配だ。

私が顔を上げると、下坂課長補佐の隣でビールを飲んでいた葉月が、私に目配せをした。

きっとこれから作戦を決行するという合図なのだと気付いた私は、葉月の目を見てうなずく。

葉月は下坂課長補佐の様子を窺いながら茄子の漬け物に手を伸ばした。

「あー、ナスビの漬け物ってなんでこんなに美味しいんやろ。泉州の水茄子やったらもっと美味しいんやけどなぁ」

葉月がバリバリの関西弁で大きな独り言を言うと、下坂課長補佐は小さく首をかしげた。

「ナスビ……?」

「ナスビですよ。ホンマに美味しいですよね。多分ナスビ嫌いな人なんていてへんでしょ?」

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