社内恋愛狂想曲
「ちゃんと?」

「酒の力を借りて後先考えずにしたとか思われたくないし、まさか今日こんなことになるとは思ってなかったから、なんの準備もしてないし……」

準備ってなんだ?

二人の初めての夜はきれいな夜景の見えるおしゃれなホテルを予約して、とか?

私はそんなことにはこだわらないけど、潤さんは意外と気にするタイプ?

「えーっと……私はあんまり気にしないんですけど……潤さんがそう言うなら」

私がそう言うと、潤さんは首をかしげて何か考えるそぶりを見せた。

あれ……?私、また何かおかしなことを言ったのかな?

「気にしないって……。志織、ホントに意味わかってる……?」

「えっ?初めての夜は何か特別感を出したいとか、そういうことじゃないんですか?」

思った通りに答えると、潤さんはため息をついた。

「それもいいんだけど、そういうことじゃなくて…………子どもは結婚してから欲しいなと……」

「えっ?!あっ……はい……」

さすがの私も、潤さんの言わんとしていることを察した。

つまりあれだ。

そう、まさしくアレだ。

準備していないものの意味がわかると、その意味を勘違いして“気にしない”と言ってしまったことが無性に恥ずかしくなり、思わず両手で顔を覆った。

< 605 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop