社内恋愛狂想曲
潤さんは私の手を引いて階段を上がり、2階の奥の部屋の前で立ち止まる。

前に私と葉月が泊めてもらった部屋だ。

「布団、用意しておいたから」

「……え?」

何もないかもとは思ったけど、まさかの別室?!

「潤さんは?」

「俺の寝室はそっちだから」

「はぁ……それは知ってますけど……」

ここは大人しく「おやすみなさい」と言って、この部屋で用意してくれた布団を借りてひとりで寝るべきだろうか?

……いや、やっぱりそれおかしくない?

ようやく晴れて恋人同士になった大人の男女が、何が悲しくて別々の部屋で寝なきゃならんのだ。

「じゃあ、おやすみ」

潤さんはそう言って私の手を離そうとした。

私はその手を強く握って引き留める。

「……なんで部屋まで別々なんですか?」

私が下を向いて廊下を凝視しながら尋ねると、潤さんはモゴモゴと口ごもる。

「なんでって……疲れただろうからゆっくり休んでもらった方がいいかなぁと思って……」

疲れただろうからゆっくり休めって、私はただのお客さんか?

宿屋に来た覚えはないんだけど。

「私は潤さんと一緒がいいんですけど……もしかして他人がいるとよく眠れませんか?」

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