社内恋愛狂想曲
「これで胸を張って“志織は俺の婚約者だ”って言える」

「嘘が本当になったわけですね」

「俺は最初から嘘をつくつもりはなかったよ。志織をあきらめるつもりもなかったし、なんと言っても家康だから」

“家康だから”というのはどういう意味なのか?

私の中には、歴史的な背景以外は、ホトトギスが鳴くまで気長に待つ忍耐強い将軍というイメージしかない。

私が首をかしげて考えていると、潤さんはまた笑いをこらえた。

「家康は戦が有利になるように、自分の味方についてくれってあっちこっちに書状を送って根回しをしてたんだってさ。だから俺もそれに習って、本丸を陥落させるための根回しとして外堀から埋めてみた」

「へぇ、ためになる……って……えっ?」

もしかして、いろんな人に私を婚約者だと紹介して、あとになって“あれは嘘でした”と言えないようにしていた?!

外堀から埋めていくというのはそういう意味だったのか!

「二次会でも志織は俺の婚約者だって言っちゃったから、もしフラれたらどうしようかと本気で思ったけど……もう指くわえて見てるだけでいるのはやめて、今度こそ絶対に志織を落とす覚悟だったんだ」

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