社内恋愛狂想曲
「私、そのとき潤さんと下坂課長補佐が店から出てくるのを偶然見かけたんだけど……店を出たところで下坂課長補佐がつまずいて転びそうになって潤さんの腕にしがみついて、潤さんがそれを支えて……」

「ああ……確かにそんなことがあったな」

「触られても触っても平気だったんですか?」

「平気じゃないけど……とっさに手が出たって感じかな。誰かが自分のすぐ横で倒れそうになったら、志織だって普通に助けるだろ?」

確かにそんな状況であれば、私だって同じようにするだろう。

相手が苦手な女性であろうと、倒れそうになっている人がいたらとっさに助けてしまうあたりが、超絶いい人の潤さんらしい。

「そうなんですね……。私は潤さんがずっと好きだった人は下坂課長補佐なんだと思い込んでたから、下坂課長補佐には触れても触れられても大丈夫なんだと勘違いしちゃって……」

「全然大丈夫じゃないけどな。あのときはとっさに手が出たけど、あとになっていやな汗が出た。おまけにじっと見つめてくるから必死で目をそらして……。でもそれが変に気を持たせてしまったみたいで、あれからやたらと電話してきたり触られたりするようになって参ったよ……」

潤さんの誰に対しても分け隔てなく優しいところは長所だと思うけれど、無自覚のうちに相手に気を持たせてしまうのだから、やはり短所でもあると言えるだろう。

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