社内恋愛狂想曲
固い固い……。

これは相当緊張してるな、潤さん……。

母にも潤さんのド緊張ぶりが伝わったらしく、少し笑いをこらえながら私の方をチラッと見た。

印象は悪くないらしい。

「いらっしゃい、そんなに固くならなくても大丈夫ですよ。どうぞお上がりください」

「はい、お邪魔します」

潤さんは今にも体の節々から音が聞こえてきそうなほどギクシャクした動きで靴を脱いで振り返り、しゃがみ込んで脱いだ靴を丁寧に揃えている。

「潤さん、母も言ってましたけど、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。うちはこの通りどこにでもある一般家庭なので、もっと気楽にしてください」

私がとなりにしゃがんで小声でこっそりそう言うと、潤さんは顔をひきつらせた。

「いや……どんな家であろうと関係ないよ。これから志織のご両親にご挨拶するんだと思うとめちゃくちゃ緊張して……」

「いつも通りでいいんです。潤さんはそのままでじゅうぶんすぎるくらい好青年なんだから」

「“どこの馬の骨ともわからんお前なんぞに大事な娘はやらん!”とか言われたりしないかな……」

なんだそれは!

今どき、そんな大昔のホームドラマみたいなことを、うちの親が言うわけないのに!

< 675 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop