社内恋愛狂想曲
思わず吹き出してしまいそうになりながら、潤さんの背中を優しくさする。

「私の両親が潤さんを気に入らないわけがないでしょう?潤さんは私が選んだ人ですよ?自信持って」

「……善処します」

追い詰められた営業マンみたいな返しに、また笑いがこみ上げてきた。

本当に真面目な人だ。

私は周りを見回し、誰も見ていないことを確認してから、潤さんの頬にすばやくキスをした。

潤さんは少し驚いた顔をして、指先で自分の頬に触れる。

「ちょっとは落ち着いた?」

「ビックリした……けど、ちょっと落ち着いた」

「良かった。さぁ、行きましょう」

「……うん」

廊下を通ってリビングに入ると、奥のソファーには新聞を広げている父の姿があった。

こちらも落ち着かないらしい。

いつもはその場所で新聞を読んだりしないのだ。

「お父さん、ただいま」

「ああ……おかえり」

父は新聞から視線を外してこちらをチラッと見たかと思うと、またすぐに慌てて新聞の方に視線を戻した。

どうやら潤さんと目が合ってしまったらしい。

< 676 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop