社内恋愛狂想曲
「これ、よろしかったらどうぞ。お口に合うといいんですが……」

「お気遣いありがとう。遠慮なくいただきます」

誰がどう見ても、この家で一番強い権力を持っているのは母だと思うだろうし、それだと手土産は母に渡しそうなものなのに、潤さんはなぜ父に渡したんだろう。

不思議に思いながら父が手土産を受け取るのを眺めていると、客間にお茶を運ぼうとしていた母が私のそばで立ち止まった。

「ちゃんとわかってるのねぇ……感心したわ」

母はそう呟いて、さっさと客間に向かう。

わかってるって……何が?

私にはさっぱりわからない。

母に続いて客間に入ると、父は紙袋に印刷された店名を見て嬉しそうに笑っていた。

「お父さん、やけに嬉しそうだね。どうしたの?」

「ん?お父さんはこの店の和菓子が大好きでね。三島くん、開けてもいいかな?」

「どうぞ」

ソワソワして子どものように笑っている父を見て、潤さんはホッとしたようだ。

父はいそいそと包装紙をはがして箱を開け、ひときわ嬉しそうに笑った。

「栗饅頭と大福が有名なんだってね」

「もちろんそれも好きだけど、お父さんは特にこれ……きんつばが好きなんだ。嬉しいなぁ」

「良かったわね、お父さん」

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