社内恋愛狂想曲
いきなりそんなことを言われても、すごい!と素直には喜べないし、むしろ信じられない気持ちの方が大きい。

なんとなく聞いてはいけないことを聞いてしまったような、知らずにいた方が良かったことを知ってしまったような気分だ。

潤さんは放心状態の私に頭を下げる。

「ごめん、志織。ずっと黙っていられるとは思ってなかったし、いずれ話さなきゃとは思ってたんだけど、なかなか切り出せなくて……」

「ああ……はい……。ええと、なんていうか……」

こんなとき、なんと答えれば良いのだろう?

“そんなの全然関係ない”なんて嘘でも言えない。

私は潤さんが好きだから結婚したいと思ったわけだし、潤さんのお父さんがどれほど大きな会社の社長さんであっても、潤さんを好きな気持ちに変わりはない。

だけどもし潤さんがお父さんの会社を継ぐのだとしたら、結婚相手は本当に私でいいんだろうか?

私にはあまりにも荷が重すぎて、一気に怖じ気づいてしまう。

母はそんな私の戸惑いや及び腰になる気持ちを察したのか、腕組みをして何か考えている。

「お父さんがあじさい堂の社長さんなのに、潤さんはなぜ今の会社に就職したの?」

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