社内恋愛狂想曲
母が私の気持ちを汲んで尋ねると、潤さんは母の方に向き直り背筋を伸ばした。

「今の会社の会長は母方の祖母なんです。祖母は自分の子育てが間違っていたせいで孫に悲しい思いをさせてしまったと言って、僕たち孫のことをとても大事にしてくれたんですが……大学時代に経済誌の記事を読んで、祖母の経営者としての姿に感銘を受けて、コネなどは使わず他の学生と同じように入社試験を受けて就職しました。母方のいとこたちも僕と同じように入社して働いています」

「あらー……どちらにしても業界最大手の会社の血筋なのねぇ……。それで潤さんは将来的にお父さんの会社を継ぐつもりなの?」

私が潤さんに聞きたかったことを、母はいとも簡単に尋ねた。

潤さんは小さく首を横に振る。

「化粧品メーカーということもあって女性の多い会社ですし、僕には不向きだと思うので……。曾祖父の代から続いた会社を僕の代で潰すわけにはいきませんから、有能な父の部下に継いでもらえればと……」

「そうねぇ……。だけどお父さんは潤さんに継いで欲しいとお思いでしょう?」

「確かにそれは認めます。早く身を固めて後を継いでくれと何度も言われましたし、しつこく見合いも勧められたんですが……好きでもない人とは一緒になれないし、会社を継ぐ気はないからと言って、ずっと断ってきたんです」

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