社内恋愛狂想曲
「二人の気持ちがしっかり固まったら、いつ結婚してもいいと私は思ってるけど……お父さんはどう思う?」

母に意見を求められると、黙ってお茶を飲みながら話を聞いていた父が、湯呑みをテーブルに置いて静かに口を開いた。

「うん……。何があっても潤くんが志織のことを信じて味方になってくれるなら、いつ結婚してもいいよ。でもね……今はまだダメだ。志織が迷ってるし、潤くんは志織を信じきれていないから」

父は一言一言、噛みしめるようにそう言って、また静かにお茶をすする。

「……だそうよ。お父さんがそう言うなら、私も今の段階では賛成できないわね。とにかくもう一度二人でよく話し合って、答えが出たらまた報告してちょうだい」

潤さんは「はい」と返事をしてから口を真一文字に結び、膝の上で拳をぐっと握りしめて、また両親に深く頭を下げた。


それから予定よりずいぶん早く実家を出て帰ることになった。

潤さんは帰り際まで何度も両親に頭を下げた。

車に乗る直前、母は私の肩を叩き、耳元に口を近づけてこう言った。

「志織、しっかりしなさい。今の自分にとって何が一番大切か、よく考えるのよ」



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