社内恋愛狂想曲
「思ってたよりずっと緊張したけど……今日は志織のご両親に会えて良かったよ」

「そうですか?母がなんだか失礼なことばっかり言ってましたけど……」

「そんなことないよ。志織が心配だから、いろいろ尋ねたんだと思う。二人とも志織のことをすごく大事に思ってるんだってことが伝わってきて嬉しかったし、すごくうらやましかったな」

潤さんは笑みを浮かべながらそう言ってマグカップを口に運び、湯気のあがるコーヒーを一口飲んだ。

私も何か話さなければと考えながらコーヒーを飲む。

だけど何から話せば良いのかわからず、言葉が一言も出てこない。

潤さんは顔も上げられないままテーブルの上でカップを握りしめている私の手を両手で包み込んだ。

「あのさ……さっきの話だけど……家のことをちゃんと話さずにプロポーズしたのは、本当に悪かったと思ってる。だけどご両親の前でも話した通り、俺は親父の会社を継ぐ気はないから、志織が心配しているようなことはないと思うんだ。だから……今は家のことは抜きにして、俺のことだけ見てくれないか」

潤さんの気持ちはわからなくもない。

だけどただ付き合うだけならそれでいいとしても、結婚となると家同士の繋がりができて、潤さんの身内は私の身内にもなるわけだから、それを無視して結婚を考えるのは難しい。

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