社内恋愛狂想曲
もしかしたら母は私が嘘をついていることに気付いているのか、“一応そういうことにしておこう”とでも言いたげな顔をした。

いや、考えすぎか?

私が嘘をついて後ろめたいと思っているからそう感じるのかも知れない。

これ以上突っ込まれるとボロが出て嘘がすぐにバレてしまいそうなので、無理やりにでも話題を変えようと、私は頭をフル回転させて別の話題を探す。

「そういえば……昨日なかなか連絡がつかなかったって看護師さんが言ってたけど、何かあったの?」

「昨日ねぇ、お父さんが大変なことになっちゃって」

「えっ、お父さんが?」

詳しく話を聞いてみると、父は昨日の昼過ぎに仕事が終わって家に戻り、母と一緒に昼食を取ったあと、授業に使うプリントを作るためにリビングでパソコンに向かっていたのだが、しばらく経って書斎に資料を探しに行こうと立ち上がりかけたとき、突然腰に激痛が走って転倒し、その拍子に足も捻挫して動けなくなったらしい。

母が急いでタクシーを呼び病院へ連れて行ったそうだが、父は何も持つ余裕もなく携帯を家に置いたまま出掛け、母に至ってはタクシーの中で兄に電話してそのまま膝の上に携帯を置いていたのを忘れ、タクシーから降りるときに地面に落として思いきり踏みつけ壊してしまったのだという。

< 734 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop