社内恋愛狂想曲
きっと普段からいいものを食べて舌が肥えているであろう相手に、私の作った簡単な料理を振る舞ったのだと思うと、なんとなく恥ずかしい。

「身なりはきちんとしてたけど気取った感じはなかったし、唐揚げとかタコ焼きとか美味しそうに食べてたから、意外と庶民派なのかなぁ……」

母に背中を拭いてもらい、パジャマのボタンをとめながらそう言うと、母はテーブルの上から何枚かの紙を取って私に差し出した。

「庶民感覚を大事にしてるんだって」

「え?」

「娘の嫁ぎ先になるかも知れないから気になってね」

どうやら母はパソコンを使って潤さんのお父さんのことをネットで調べ、気になる記事をプリントアウトしたらしい。

いつの間に母はパソコンやプリンターを使えるようになったのだろう?

ついこの間までは機械は苦手だと言って、家族に頼りきっていたというのに。

「これ……お母さんが?」

「そうよ。そんなの“あじさい堂”“社長”って入れて検索したらいくらでも出てくるわよ。あんた、スマホとかパソコン使えるんでしょ?現代人なのにネットで調べようとは思わなかったの?」

「そんなの思いつきもしなかった……」

潤さんのお父さんの会社の規模の大きさにただ怯えて目をそらそうとしていただけの私とは違って、母はその目とパソコンを駆使して情報を得ていたようだ。

私の母はなんて賢くて頼もしいのだろう。

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