社内恋愛狂想曲
「そうかぁ……。やっぱ好きなんだ」

「そうだよ!フラれたくせにあきらめの悪い女だと思うかも知れないけど、私は潤さんが好きだからどうしても会いたいの!潤さんの家に連れてって!お願い!!」

自分のことをケンカして逆ギレした小学生みたいだと思いながら、運転席の伊藤くんに手をあわせて頼み込んだ。

伊藤くんは赤信号でゆっくりとブレーキをかけ、葉月と顔を見合わせている。

「会わせてやりたいのは山々なんだけどなぁ……今家に行っても潤くんには会えないよ」

「えっ……なんで?じゃあどこにいるの?」

私が尋ねると、二人はまた顔を見合わせて困ったそぶりを見せた。

葉月は涙を浮かべた私の顔を見てため息をつく。

「ホンマはこれも言わん約束やったけど……志織には言うなって言われてるねん」

「どういうこと?」

「ごめんな。かわいそうやけど、これ以上はなんも言えん」

葉月がそう言いきったので、誰かとの約束を守るために、私がこれ以上何を聞いても答えてはもらえないのだと察した。

私には知らせたくない事情が潤さんにあることは間違いない。

私は葉月の家に着くまでの間、また黙って窓の外を眺めながら、どうにかしてその真相を知る手段はないものかと考え続けた。


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