社内恋愛狂想曲
だけど潤さんが引き返したであろう会社までの道のりは整備された歩道の一本道で、道路を渡ったりはしないはずだ。
「どうしてそんなことに……」
「すぐ目の前で歩道の端の方を歩いていた女性の押していたベビーカーが、歩道のはがれかけていた石畳に引っ掛かって車道に倒れたらしいです。潤さんはすぐに車道におりて、そこに向かって走ってきたトラックから赤ちゃんを助けたんですが、歩道に戻るのが間に合わず跳ねられてしまったと…」
危険をかえりみず見知らぬ人の赤ちゃんを助けて自分が犠牲になるなんて、潤さんはどこまでいい人なのか。
他人が聞いたら立派な美談なのだろうけど、これで潤さんが命を落としてしまったら、私にとっては後味の悪い最悪の寓話だ。
潤さんが助けた赤ちゃんの母親を一生責めてしまうかも知れない。
エレベーターは6階で止まり、扉が開く。
瀧内くんのうしろを歩きながら、潤さんのいる病室に一歩ずつ近付いているのだと思うと、またさらに鼓動が速くなり、足取りが重くなった。
「どうして私には教えてくれなかったの?」
「潤さんが事故にあったとき、志織さんは出張に行ったところだったでしょう?潤さんが、志織さんには心配かけたくないから言わないでくれって……」
「どうしてそんなことに……」
「すぐ目の前で歩道の端の方を歩いていた女性の押していたベビーカーが、歩道のはがれかけていた石畳に引っ掛かって車道に倒れたらしいです。潤さんはすぐに車道におりて、そこに向かって走ってきたトラックから赤ちゃんを助けたんですが、歩道に戻るのが間に合わず跳ねられてしまったと…」
危険をかえりみず見知らぬ人の赤ちゃんを助けて自分が犠牲になるなんて、潤さんはどこまでいい人なのか。
他人が聞いたら立派な美談なのだろうけど、これで潤さんが命を落としてしまったら、私にとっては後味の悪い最悪の寓話だ。
潤さんが助けた赤ちゃんの母親を一生責めてしまうかも知れない。
エレベーターは6階で止まり、扉が開く。
瀧内くんのうしろを歩きながら、潤さんのいる病室に一歩ずつ近付いているのだと思うと、またさらに鼓動が速くなり、足取りが重くなった。
「どうして私には教えてくれなかったの?」
「潤さんが事故にあったとき、志織さんは出張に行ったところだったでしょう?潤さんが、志織さんには心配かけたくないから言わないでくれって……」