社内恋愛狂想曲
潤さんは頭に包帯を巻かれ、左足をギプスで固定された状態で、ベッドの頭の部分を背もたれにして座っている。

ノックも無しにいきなりドアが開いたことに驚いたのか、潤さんは目を丸くしてこちらを見た。

良かった……ちゃんと生きてる……!

痛々しい姿ではあるけれど、想像していたような危険な状態ではないことに安堵した途端、私の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

「し……志織?!えっ?何その腕……?!」

潤さんが私の姿にうろたえていることもかまわず、私は駆け寄って右腕で潤さんに抱きついた。

「潤さん……生きてて良かった……!もう二度と会えなかったらどうしようって……」

「俺も志織に会いたかったよ」

子どものように泣きじゃくる私の頭を、潤さんは何度も何度も優しく撫でてくれた。

ドラマの主人公のように、抱き合って再会の喜びを噛みしめている私たちのうしろで、わざとらしい咳払いが聞こえた。

「お取り込み中のところ失礼しますが、ちょっとよろしいですか?」

瀧内くんの存在を思い出し、私は慌てて潤さんから離れ涙を拭う。

「失礼しました……」

部下の前でとんだ醜態を晒してしまい、恥ずかしくて顔を上げられない。

< 766 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop