社内恋愛狂想曲
「ああ……。志織を牽制するためじゃないかな、あの人もきっとプリンのジンクスを若い子達から聞いたんだよ。それにあの人が昔からプリン大好きっていうのは嘘だと思う。俺は一度も聞いたことないから」

なるほど、そういうことか。

下坂課長補佐は私も当然社食のプリンのジンクスを知っていると思って、潤さんからもらって食べたと言ったんだろうけど、これも私が知らなかったことで大誤算だと言える。

そりゃ確かに少しはムッとしたけど……。

うちの会社の社員たちはどれだけあのプリンに振り回されているのか。

販売戦略として勝手に作り上げたジンクスを社員に流したのだとすると、プリンを作っている千代子おばちゃんはものすごい策士なんじゃないかと思う。

「プリンひとつで幸せになれたら誰も苦労しないのに、“幸せになれる”って言われると信じちゃうってことは、みんな幸せになりたいと思ってるんだね」

「俺もそのうちのひとりだけどな。……うまくいかなかったけど」

「そうかな?“幸運を運ぶプリン”とも呼ばれてるらしいから、あながちうまくいかなかったとも言い切れないんじゃない?」

「だったらもっとすんなり運んで来て欲しかったな……」

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