社内恋愛狂想曲
私に葉月を取られた伊藤くんが、ひとりぼっちの部屋でコンビニ弁当を温めて寂しそうに食べている姿が容易に想像できる。

「そんな……。先に言ってよ、葉月……」

「いやー……。なんや言うて志織のお母さんも困ってはったし、志岐は元気なんやから少しくらいひとりにしても大丈夫やろと思て」

面倒見のいい葉月のことだから、怪我をした私のことを放ってはおけなかったのだろうけれど、これはさすがに伊藤くんが気の毒だ。

「ごめんね、伊藤くん。二人が一緒に暮らしてるとは知らなかったから、葉月に甘えちゃって……」

「いや、佐野は俺にとっても大事な同僚だし、葉月が困ってる佐野をほっとけないのもわかるしな。それにそこが葉月のいいところだから、俺は別にかまわないんだけど……」

そう言いながら伊藤くんは恋しそうな目で葉月を見る。

いやいや、それは“別にかまわない”っていう顔じゃないよ!

本当は伊藤くんは葉月がいないのは寂しいから、そろそろ返して欲しいと思っているはずだ。

「そうかぁ……。じゃあやっぱり志織、俺んちに来れば?志織のご両親には、一緒に住む理由を俺から説明してもいいし……」

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