社内恋愛狂想曲
「葉月ができなかったことやれんのか!佐野、やるなぁ!」

たいしたことはしていないのに、そんなに大袈裟に誉められるとなんだか照れくさい。

「いやいや……そんな難しいことじゃないから……」

「俺もできるぞ」

潤さんは左手をおしぼりで拭いて卵をひとつつかみ、ボウルの中に割り入れた。

「すげぇな潤くん!利き手じゃないのに左手でもできんのか!」

「両手でいっぺんに2個割れる」

「やべぇ、マジか!見たい!」

興奮気味の伊藤くんに持ち上げられて気を良くしたのか、潤さんは右手もおしぼりで拭いて両手に卵を持ち、鮮やかな手付きでいっぺんに割って見せた。

「さすが潤くん!マジやべぇ!!」

もはや何がヤバイのかよくわからないが、伊藤くんは目を輝かせ、潤さんに尊敬の眼差しを向けている。

瀧内くんは初めてのピーラーに苦戦しているのか、キッチンから一歩も動かずニンジンと対峙している。

いとこ同士とはいえ、ずいぶんタイプが違うなと思う。

「もう一回!潤くん、もう一回やって!」

「もう一回?しょうがないな……」

伊藤くんにおだてられ、潤さんはまんざらでもなさそうな顔をして、また卵に手を伸ばそうとしている。

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