社内恋愛狂想曲
このまま放っておくと潤さんが卵を全部割ってしまいそうな勢いだ。

「潤さん……私のできる数少ない仕事を取らないで」

「ああ……そうか、悪い」

私が再び卵を割り始めると、潤さんはすぐそばにいた伊藤くんに剥けたエビを渡した。

「これ持っていって、他にすることないか木村に聞いて」

「了解!葉月ー!」

伊藤くんは潤さんに渡されたエビを持って、ひと足先にキッチンに戻っていた葉月の元へ駆けて行く。

やることがなくなって暇になったのか、潤さんは卵を割る私をじっと見ている。

「あんまり見られるとやりにくいんだけど……」

「あ、ごめん。暇だしつい……。志織は自分で不器用だって言うわりに、料理は手際よくできるんだなぁと思って」

「そんなことはないけど……。一人暮らし始めた頃は料理なんてろくにできなかったから、毎日練習してるうちに慣れたっていうか……」

「へぇ、俺も似たようなもんだ。志織にもそんな頃があったんだな」

料理のできない潤さんなんて、料理上手な今の潤さんからは想像もつかない。

潤さんはいつ頃から料理を始めたんだろう?

「料理を作り始めたのは社会人になってから?」

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