社内恋愛狂想曲
「せっかく結婚してふたりで新生活始めるんだから、新居借りればいいのに。新婚さん向けの部屋とかあるじゃない?」

意図的に“新婚さん”という言葉を使ってみたけれど、伊藤くんも葉月も平然としている。

こんなことでは動じないか。

「共働きだし夫婦二人だけの間は今のところでじゅうぶんだって葉月が言うから。それに子どもができたら一戸建て買うつもりだし、それまでにできるだけ貯金もして、住宅展示場とかいろいろ見て準備しとこうかって」

「へぇ……」

経済観念がしっかりしている葉月のおかげでもあるのか、二人は堅実に先を見据えていろいろ考えているらしい。

冷やかすつもりが感心させられてしまった。

「ところでいつ入籍するの?」

「手続きとかいろいろまとめてできるように、来年の年度始めに合わせて入籍しようかって言ってる」

「4月1日?エイプリルフールだけど……いいの?」

エイプリルフールが結婚記念日になるなんて、複雑な気持ちにはならないのかと思って隣にいる葉月の方を見ると、葉月は真顔でうなずいた。

「せやねん、“結婚しました”て報告したら“ハイハイ、どうせ嘘やろ”て流されるやろな。ほんであとから“嘘ちゃうかったんかいな!”てなるやろ?それが狙いや」

< 844 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop