社内恋愛狂想曲
マンションに着くと、辺りは焼け焦げた煤の臭いが充満していた。

私の部屋のドアを開けると、煤の臭いと布の湿った臭いが混じりあって、中に入ることはおろか、息をすることさえためらわれる。

よく見てみると、ベランダ側のガラス戸についている換気用の小窓が開けっ放しだったようだ。

上の階の消火に使った水が床や壁に染みて雨漏り状態になっていることに加え、この小窓が開いていたせいで私の部屋は余計にひどい状態になってしまったのだろう。

「これはひどいな」

伊藤くんと葉月と瀧内くんは鼻と口を押さえて玄関に立ちすくんでいる。

土足のまま部屋に入り、窓を開けて換気扇を最強にしたけれど、その臭いはなかなか消えそうもない。

私に続いてみんなも靴を履いたまま、おそるおそる部屋に入って部屋の中を見回している。

伊藤くんと瀧内くんは初めて私の部屋に来てくれたのに、お茶も出せないようなひどい有り様で申し訳ない。

クローゼットのドアを開けてみると、中の壁もやはり湿っていやな臭いがしていた。

濡れていなくても臭いがついて、衣類はほとんどダメになってるかも知れない。

そんなに高価な服はないけれど、気に入っていたものを捨ててしまうのは惜しい気がする。

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