社内恋愛狂想曲
それがなんとなく、私の中でどんどん色褪せていく護との思い出そのもののように見えた。

最近では思い出すこともすっかりなくなっていたけど、この部屋での思い出のほとんどは、護と過ごしたことと護を待っていたことばかりだ。

潤さんが部屋に来たのは実家に挨拶に行ったあの日だけだった。

挨拶に行く前はバカみたいに盛り上がって幸せいっぱいだったのに、実家からの帰りには潤さんと結婚する自信がなくなって別れ話になってしまった。

あれからまだほんの少ししか経っていないはずなのに、ずいぶん前のことのように感じる。

「なんか……この部屋、ろくな思い出がないかも知れない」

思わず声に出して呟くと、葉月は私の背中をポンポンと叩いた。

「ほんなら、ろくでもない思い出と一緒に、ここにあるもん全部捨ててまうか?」

冗談とも本気とも取れる葉月の言葉を聞いて、私は住み慣れた部屋の中をゆっくりと見回して少し考える。

「うん……そうだね……捨てちゃおうか!」

思いきって捨ててしまおうと決めて大きくうなずくと、伊藤くんは少し驚いた様子で何度もまばたきをした。

「えっ、捨てるって……ここにあるもの全部?」

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