社内恋愛狂想曲
母がお茶とお茶菓子を出し、潤さんと潤さんのお父さんは手土産を父に渡す。

父の口元がすっかりゆるんでいる。

父は昔から喜怒哀楽の“喜”と“楽”の感情が隠せず、すぐに顔に出てしまうのだ。

大好きな店の和菓子と滅多に口にできない高いお茶をいただいたことが、よほど嬉しかったのだろう。

「潤がお世話になっております。潤の父の三島 修一です」

「母のゆうこです」

ここでも潤さんのご両親は丁寧に頭を下げて自己紹介をした。

父は慌てて口元を引き締め頭を下げる。

「こちらこそ志織がお世話になっております。志織の父の佐野 秀作です」

「母の君枝です」

私の両親も同じように自己紹介をすると、潤さんのお父さんが父の顔をマジマジと見て首をかしげる。

「もしかして……サクちゃん?」

「うん、久しぶり。イチは相変わらず元気そうだね」

父親同士が嬉しそうに固い握手を交わしているのを、私たちはポカンとして眺めている。

え……?何これ、どういうこと?

「あの……お父さん……?」

私が声をかけると、父は微笑みながら私の方を向く。

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