社内恋愛狂想曲
そんな中でもゆう子さんだけはいつも通り冷静な顔をして、お茶菓子の乗った木の器からミニどら焼きを手に取り、包みを開けて口に運んだ。

よく見るとゆう子さんの前には、空になったお茶菓子の包みが4つ並んでいる。

5個目……?

よほど美味しかったのか、それともお腹が空いていたのか。

あるいは、私たちの結婚話よりも目の前のお茶菓子に夢中だったのか?

私が積み重なったお茶菓子の包みを唖然として眺めていることに気が付いたゆう子さんは、指先で口元を押さえてかわいらしく笑った。

「あら、ごめんなさい。わたくし、甘いものには目がなくて……。特にこういった一口サイズの小さな和菓子がかわいらしくて、大好きなんです」

会長の長男と結婚したくらいだから、ゆう子さんもやはり良家のお嬢様なんだろうか。

まるで無垢で可憐な少女が、そのまんま大人になったみたいな人だと思う。

そんなに無邪気に笑って言われたら、かわいさのあまりお茶菓子を山盛りにしてあげたくなってしまうではないか。

「そうなんですね……。喜んでいただけて良かったです……。どうぞ、お好きなだけお召し上がりください……」

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