社内恋愛狂想曲
潤さんはそう言いながら重箱の蓋を開ける。

上の段には卵焼き、野菜の肉巻き、焼き鮭、肉じゃが、カボチャのサラダが彩りよく詰められている。

そして下の段には、中の具がわかるように握られた、たくさんのおにぎりが並んでいた。

意外なことに家庭的な料理ばかりで、少しホッとする。

じつはこれまで聞いたゆう子さんのハイスペックぶりから、もしかして三ツ星レストランで出てくるような名前も食べ方もわからない料理とか、口にしたこともないような高級食材ばかりだったらどうしようかと身構えていたのだ。

「美味しそう……。ゆう子さんって料理も得意なの?」

「ヘタではないけど、決して得意ではなさそうだな」

ゆう子さんにも得意でないものがあるのだと聞いて、ゆう子さんも人間なんだなと少し安心する反面、それなのに私たちのために作ってくれたことが嬉しかったり、朝早くからこんなにたくさん作るのは大変だったんじゃないかと申し訳なく思ったりする。

「ゆう子さん、料理を始めたのはうちの親父と付き合い始めて実家を出てからだって言ってたから。結婚前と離婚後に実家にいたときも、玲司の父親と結婚してるときも、専属の料理人がいたから食事の支度をする必要がなかったんだって」

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